民芸品って良いですね、ぬくもりが感じられて。
職人さんの手仕事というのは
ブランド品のように主張して注目を集めるわけではないけれど
使い勝手が良さそうだからと偶然にも手に入れたものが
さりげなく置くだけでさまになる。
ただの日用品に過ぎないのに
使い手のことを思いながら
1つ1つを丁寧に長く使ってもらえるようにという
こだわりがあるのです。
信州・松本から美ヶ原高原へ向かう住宅地にあるのは
古い蔵を改修した「松本民芸館」。
長屋門をくぐると
お庭は無造作な林のようになっていて
石畳のアプローチで玄関へ。
あまりに静かなところなので
緊張感を持って引き戸を開けるも
受付の物腰柔らかそうな応対に安心。
ここは
それまで美術界が正当に評価してこなかった無名の工人による
民衆の暮らしの中から生まれた日用品などの美しさを
発掘して世に紹介しようという
柳宗悦そうえつ、むねよし氏(長男は柳宗理氏)らを中心とする「民芸運動」に
感銘を受けた丸山太郎という工芸店の主人が
1962昭和37年に私設で開いた博物館で
その確かな目で集められた各国の民芸品6800点を保存
常時500点ほど展示しているものを
現在は松本市が引き継ぎ「松本市立博物館・分館」としているところなのです。
蔵の内装も
立派な梁と白い漆喰
畳と床も無理なく馴染んでいて素敵です。
そこに置かれた松本箪笥や行李など。
松本箪笥をはじめとする松本家具は
江戸時代の和家具作りから300余年
戦後、池田三四郎氏が職人たちを先導し復活させたもので
洋風のデザインや技術を取り入れることで発展してきました。
家具は国産のミズメザクラを主材に
「組手くみて継手つぎて」といわれる技法を駆使し
塗り重ねられた漆やラッカーで仕上げる松本家具は
中でも椅子がイギリスのウィンザーチェアの影響を受け
日本での代表的な産地として知られ愛用者も多いとか。
飽きのこない落ち着いたデザインで
使うほどに湧く愛着
堅牢さと美しさを兼ね備えた松本家具は
伝統工芸の指定を受け
多くの人を魅了しているのです。
吹き抜けの空間に
さらりと虫籠にビン玉など
いいなぁ、いいなぁなんて思いながら…
2階へ上がってガラスの器たちや焼き物の類
綺麗な糸で模様を出している手まりや玩具。
ほの明るい照明や古びた感じの壷まで
いちいちお洒落!!!
静電気も起こらない髪に優しい木の櫛も
バリエーションに富んでいました。
名もなき工人たちの手仕事は
どれをとってみても味があり
ここではゆっくり楽しめるのです。
この日は松本市内のこちらにお世話になりました。
松本の民芸精神を伝える館内。
アルプスを控える松本は湧き水が多いことでも知られ
大浴場にも地下水が使われているとのことでした。
散策途中で見つけた湧き水。
近年は「クラフトの街 松本」の知名度も高く
こだわりの逸品が発見できたり
お洒落な飲食店などもあって
見るだけでも楽しめそうです。